【短】きみに溺れる
ベッドのきしむ音が大きくなり、息遣いが激しさを増した。
私は苦しさに顔をゆがめながら、今までで一番、彼を近くに感じた。
……このまま死んでもいい
熱に侵された頭が、そう叫ぶ。
望んだのは死そのものではなく
今この瞬間を、“永遠”に変えること。
彼の手で、刻んでもらうこと。
「マーヤ」
うわ言のように私の名前を呼んだかと思うと、彼はかすかに痙攣し、ふっと動きを止めた。
そして倒れこむように脱力して、私のとなりに体を投げ出した。
あたりに静けさが戻り、荒い呼吸だけが響く。
ふたり分の、バラバラの呼吸。酸素を求める体。
死んでもいいと思ったはずの私は生き長らえ、絶望と、幸福を同時に噛みしめる。
「……好きだ」
彼の言葉に、私は静かにうなずいた。
抱き寄せられ、彼の胸に頭をのせた。
肌の上で混じりあった汗は、すぐにひんやりと冷たくなり、乾いていった。