【短】きみに溺れる
触れられているのは皮膚なのに、それよりもっと深い部分がレンに反応する。
私という人間の、芯の部分。レンに侵された部分。
どうしてこんなにレンが好きで
どうしてレン以外では意味がなくて
なのにどうして、レンもそうじゃないのか
愛しさを欲望に変換して、レンの体を求め続けた。
彼も、私の体を求めてくれた。
だけどレンは、けっして私を求めはしない。
愛なのか、憎しみなのか
それすらわからないほど、私は濁流に飲み込まれていく。
果てたあと、彼はそのまま崩れるように眠ってしまった。
あと少ししたらまた起きて、さやかさんの元へ帰っていくのだろう。
興奮は徐々に醒め、悲しい現実だけが私たちの間に横たわっていった。
かすかに響く寝息。
となりで聞きながら、私はひとり、天井を見上げていた。