【短】きみに溺れる
そして代わりに、この質問を口にした。
「……さやかさんは、元気ですか?」
私の声に、彼はテーブルを拭く手を止めた。
間接照明で影ができた、彼の横顔。
こうして見ると2年前よりは、少しは大人っぽくなった気がする。
有線で流れていた曲が終わり、つかのまの沈黙が訪れる。
「うん。半年前から、一緒に暮らしてるんだ」
ずっと用意していた言葉のように、彼は言った。
「……そうですか」
次の音楽が始まり、店内に音が戻る。
「おふたりは、すごくお似合いでしたもんね。
学校中の憧れの的で……」
「黒崎にそういうこと言われると、変な気がするな」
「え?」