【短】きみに溺れる
――高校時代、内気な私が生徒会に入ったのは、自分の意思なんかじゃなかった。
『うちのクラスからの候補者は、黒崎さんがいいと思いまーす』
教室に響いた、けだるい女子の声。
さっさとHRを終えて帰らせろ、と言わんばかりの。
『では黒崎さんに決定、ということでいいですか?』
担任がそう言うと、おざなりに拍手が起こった。
面倒な仕事は誰に押し付ければいいのか
入学から半月で、すでにクラスの大半がわかっていたのだろう。
そして私はいつも、そういう立場に立たされる人間だった。
レンは、そんな私にもわけ隔てなく接してくれた、唯一の人。
『椎名先輩がいるなら、あたしも生徒会に入ればよかったな』
とクラスの女子たちが悔しがるくらい、彼は魅力的だった。