中曽根工業高校
「え?なんで?」

いきなりのカミングアウトな伊澄は思わず起き上がった。

「やりたい事があって…」

「なに?」

「俺、弁護士になろうと思って…」

急な展開に頭がついていかない。

「え…?」

「今の仕事に、不満はないんだ。でもこのまま死ぬまで一生この仕事を続けていくのかと思ったら…」

「でも、何で弁護士なんか…」

(何で、そんな難しい仕事を……)

「たまたま仕事通じて知り合った弁護士さんがいて、その人の話聞いてたら法律に興味わいて…」

「いや、ちょっと待って…」

「もう、今月中には辞表だすつもりだから」

(本気………?)

「………」

「寒くなってきたし、戻ろう」

二人は無言のまま、車に乗り込んだ。

ずっと沈黙のまま、伊澄のアパートの前に車を止めた。

「…司法試験、受けるの?」

「うん」

即答だった。

「受かっても、弁護士なるには学校通わなきゃいけないんでしょ、しかも司法試験なんて凄く難しいんだよ?!」

「うん、わかってる」

「わかってないよ!!」

思わず怒鳴ってしまった。

「そんな怒鳴らなくても…」

「怒鳴りたくもなるよ…」

「じゃあ、伊澄は今の仕事、一生続けていくの?」
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