中曽根工業高校
ちぃはしゃがんで下を向いた。

下の通りには、今時という感じの女子高生が3人で笑いながら歩いていた。

「…………」

「いいな、ここ。俺、彼女できたらここでプロポーズしよっかな。なんかさ、ちょっと道に迷ったフリして少し強引に連れてきてさ」

「…………うん」

ちぃは小さく相づちを打った。

「で、彼女はちょっと不機嫌でさ…ここ連れてきて………結婚しよ!とか、よくない?」

「………」

「ちぃ?」

「……うん、いいと思う」

にこっと微笑んだが、胸中は複雑だった。

(私は……結婚なんて、できるの……?)

「だよな~、楽しみだし」

また視線を落として、女子高生たちを見つめた。

「…………ヒノケン」

「ん?」



「私は…なんで私なんじゃろ」

謎のつぶやきに、ヒノケンは戸惑った。
「は?」



「小さい頃から…体弱くて…胸に手術跡とかあるし、顔も可愛くないし……性格だって……嫌われて、ばっかだし」

自分で言っておいて、涙がこみ上げてきた。

ちぃが邪険に扱うのは、西田にはじまったことじゃない。

小学校でも中学校でも、ちぃを敬遠する人間はたくさんいた。


「ちぃ」

「鳴海千紗なんかいらないよ!私、もっと普通がよかった!!」

ちぃの目から、涙が溢れた。
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