中曽根工業高校
職員室の用を済ませた伊澄は保健室のドアに手をかけた。

しかし…

「嬉しいかな」

「え?」

(誰かいる?)

「結構……冷たいとか、感情ないとか言われるから……そう言われると、嫌な気はしない」


頭の回転が早いのも、要領が良いのも、甘ったれた人間が嫌いなのも、生まれもった性分だ。

性格上、小さい頃から同年代の子より大人びていて、頼りにされていた直人だったが、冷たいと言って敬遠する人間もいた。

「そんな……感情ないなんて、水澤くんは人間だよ!!」

(水澤くん?!)

「まぁ、そりゃそうだけど…」

直人は一息ついた。

「中にはそう言う人もいるから」

中にいるのは直人とわかり、その声を聞いて、伊澄はハッとなった。

『……ちょっと、冷たくない?』

(私のことだ……)


胸と、胃の間がぎゅっと掴まれる感じがした。

きっと直人は気にしていたのだ。

それを顔に出さなかっただけで………

「気にしなくていいよ、そんなの!!」

「ん……てかあんたは大丈夫なのか?」

直人はちぃをじっと見た。
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