中曽根工業高校
「はい…大分良くなったけど……伊澄先生にお礼が言いたくて…あの時言えなかったから」

「そんな…気にしなくていいのに……処置をしたのは火野くんだし」

「はい…でも、伊澄先生にも迷惑かけたので…ごめんなさい」

ちぃは深く頭を下げた。

「いいよいいよ」

「じゃ、私はこれで……」

「帰るの?」

てっきり教室に戻ると思っていた伊澄は思わず聞いてしまった。

「はい…」

「そう…」

(まだ……辛いか)

「私……転校するんです」

「「えっ?!」」

伊澄と直人の声が重なり、思わず顔を見合わせた。

「前から決まってたんですけど…父が単身赴任してて、一緒に暮らそうって」

「そうなの…」

ため息つく伊澄の隣で、直人は小さく手をあげた。

「ヒノケンは、知ってんの?」

ヒノケンが知ったら、きっと引き止めるに違いないのだが。

「この間…話した」

「あいつは何て?」

「心配、してくれたけど……」

ちぃは少し話しづらそうに目を伏せた。

「ふーん…」

「今まで、ありがとうございました」

もう一度、丁寧にお辞儀をしてちぃは保健室を後にした。
< 137 / 249 >

この作品をシェア

pagetop