中曽根工業高校
保健室は伊澄と直人の二人きりになった。

「あのさ…」

「ごめんなさいっ!!」

「え?」

直人が言葉をつなぐ前に、伊澄は頭を深く下げた。

よく事情がわからないけど謝られた回数…本日…二回目。

「さっき…鳴海さんとの会話聞いちゃって……私、以前、水澤くんに酷い事言ったな…って今更ながら気づいて…」

「え、ちょっと待って…伊澄ちゃん」

「ん?」

(酷いこと………?)

直人は辞書を引くように、自分の記憶の中をペラペラとめくった。




『……ちょっと、冷たくない?』

『はぁ?!』




「覚えて…ない?」

自分は引きずっていただけに、拍子抜けした。

「いや、なんとなーく思い出した…かな。あれでしょ?聖也のときの…」

「そう…水澤くんの言う通り、感情的になってて…」

「え?!そんなこと言った??俺!」

やはり…直人はあまり覚えていなかった。

「うん……」

一人で引きずって落ち込んでいた伊澄は複雑な気持ちになった。
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