中曽根工業高校
「香水つけてるのかと思ったけど…」

「いや…持ってないし…………あ、兄貴のかも」

少し間を置いて、直人は気づいたように言った。

「お兄さんは香水つけるの?」

「うん。めっちゃつける!しかもさ、同じ部屋でさ、部屋中にあいつの香水の匂いが充満してたから……」

「じゃあ水澤くんにも香りが移ったのかもね」

伊澄はようやく納得できた。

「きっとそうだわ」

「じゃあ私がいつも水澤くんの匂いだと思ってたのは、実はお兄さんの香りだったんだ」

「おう、そう思うとなんか変な感じだよな」

直人は伊澄に向き直して微笑んだ。

「うん」

伊澄も微笑み返した。

「伊澄ちゃんも、いい匂いするよね」

「そう?」

「香水、つけてる?」

香水集めが趣味な伊澄は、気分によってよく香水を変えていた。

「つけてるよ、毎日違うのだけど」

「へー…あ、ゴミ」

直人は伊澄の頭を指差した。

「え、どこ?」

伊澄は手探りで頭のゴミを探した。
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