中曽根工業高校
彩香はストローでオレンジジュースの氷をつついた。

「あーまだ籍いれてねーんだ。いついれんの?」

「まぁ…そのうち」

岬は気まずそうに目を伏せた。

「ふーん…相手の写真とかねーの?写メとか」

「ない」

岬は下を向いたまま即答した。

(ラブラブな写真でも見せられたら、諦めついたかもしんないのに)



「……何か怒ってんの?」


「…………え?」


顔を上げた岬の目には涙が溜まっていた。

「えっ、なに。何で泣いてんの」

「ちが……違う」

そう言いながらも瞳からどんどん涙が流れ出てくる。

「え?!もう、なに?」

珍しく聖也も混乱した。


「水澤にも言ってないの…」

「えっ、直人に?何を?!」


岬は、ゆっくり口を開いた。


「相手……いないの」

「いない…て?」

どうゆう事か、わからない。

生物学は得意科目ではないけれど、子供が女一人で作れない事くらいはわかる。

「妊娠したって言ってから……連絡、とれなくなって……家、留守で…」


「……逃げられたのか?」

少し間を置いて、岬は頷いた。
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