中曽根工業高校
「あ、伊澄ちゃん」

「え?」

振り向くとそこには私服姿のキノが立っていた。

薄手のパーカーを羽織ってTシャツにGパンという、ラフな格好だった。

「木下くん…早いね」

「うん。あんまりギリギリとか好きじゃないから…てゆーか伊澄ちゃん、今日キレイだね。一瞬、わかんなかった」

キノは自分の気持ちに正直なので、ムダなお世辞などは一切言わない。

そんなキノに言われると、悪い気はしない。

「ありがとう。木下くんこそ、最初わからなかった」

「まぁ、いつも制服だしね。あ、そういえば直人が先に約束あって遅刻するって」

「………そう」

(誰と会うんだろ…

なるべく平静を装ったものの、キノは伊澄の落胆した気持ちを読み取っていた。

「なんか、部活の友達と約束があるみたいだけど…そいつ、夕方からバイトだからそれまで時間つぶすだけだって!まぁ、ちゃんと来るからさ。約束したし。あいつ約束ちゃんと守るから」

「うん…」
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