中曽根工業高校
「うっ……」

口をおさえてその場に座り込んだ。

「どうした?大丈夫か?」

聖也は驚き、背中をさすった。

「つわりだな。立てるか?」

直人が冷静に聞くと、岬は黙って首を縦に振った。

聖也は岬を優しくたたせた。

「どうする?タクシー呼ぶ??」

「頼む」

ようやく大体事情のわかった仲村はタクシーを呼んだ。

「誰か…付き添いいるんじゃね?」

もし、岬が途中で吐いてしまったら介抱する人間が必要だ。

中村は聖也と直人を交互に見た。

「聖也、お前いけ。伊澄ちゃんたちには、俺から言っておく」

「………わかった」

岬を先にタクシーの後ろ座席に乗せたが、動く力のない岬を奥に押し込む訳にもいかず、一旦ドアを閉めて聖也は反対側のドアから入ろうとした。

「聖也」

「ん?」

「岬は、他の男の子供……妊娠してんだぞ」

周りに聞こえないように、直人は低い声で告げた。

「…………」

「そのこと、よく考えろ」

そう言って向けられた直人の真剣な眼差しに聖也は告げた。

「……俺、本気だけど」

「………?!」

「なんなら、高校辞めて働いて3人で暮らすのも、悪くないと思ってる」

そのまま聖也はタクシーに乗り込み去って行った。
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