中曽根工業高校
やさしい味
駅前の小さなレストランの前に、一人の男が立っている。

男はケータイを取り出して時刻を確認した。

19時23分。

(…ちょっと早すぎたか)

男は少し一目を避けて、タバコに火を近づけた。

「わっ!」

火が点くか点かないかのところでいきなり後ろから声をかけられ、驚いてライターを落としそうになった。

「…っあつ!」

「驚いた~?」

ライターが手を少しかすめて手を冷やすように振っていると、後ろの声は狙っていたというように嬉しそうな声になった。

「驚いた…てか危ないだろっ!ミサキ!!」

「はは♪超びっくりしてる~」

ミサキは直人を指さして笑った。

「てか、タバコ止めるって言ってたじゃん!」

ミサキの言葉に直人は不思議な顔をした。

「…?俺、んな事言ってないけど…」

タバコは中3で吸いはじめたが、体に悪いと知りつつも、禁煙しようと思ったことは一度もない。

「……!ごめん、人違い♪」

ミサキはへへっと笑ってごまかした。

「…ふーん」

「どこ行く?」

「一応、ここにしようと…」

直人は自分たちの横に建っているレストランを指差した。

「スープ専門店?」

「ん、なんか優しい味のモン食べたいとか言われてもよくわからんくて…」
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