中曽根工業高校
覗き込んだ聖也の顔は、ひどく沈んでいた。

「聖也……お前」

「なに?」

直人の真剣な顔つきに、聖也も思わず聞き返した。

「なんか…ブサイクになったな」

「うるせぇ!!」

ふてくされたように、布団をかぶり直した。

「冗談だよ」

「たく…げほっ」

いきなり大声を出した反動で聖也はムセた。

「大丈夫かよ」

直人は聖也の背中をさすった。

「直人…」

「ん?」

「吐きそうだから…あんま優しくしんで」

「……………」

直人は手を止めて、聖也の口元に伊澄の置いたバケツを差し出した。

「ほら、吐けよ」

「………でも」

「…受け止めるから。」



「お前のわがままなら慣れたよ。全部吐かなくていいけど、あとはお前次第」





しばらく沈黙が続いた。







「彩香に…あいたい」

「あいよ」

直人はケータイを取り出し、カーテンから顔を出した。

「伊澄ちゃん、ごめん…ちょっと電話かけていい?」

さすがに生徒が教師の前で堂々と電話するのは校則違反だ。他の教師ならどうでもいいが…直人なりの伊澄への気遣いだった。

「…ちょっとトイレいってくるから。5分くらい」

そう言って伊澄は保健室から出ていった。

「…さんきゅ」
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