one contract



「スミレ‥ッ!!」

僕は上履きのままスミレに駆け付けた。
周りにいた、部のメンバー達はスミレにも僕にも驚いていた。

「あ、あの‥会長‥」
「ゴメンね、急に。君たちはこのまま活動続けて」
「は‥、はい」

僕はスミレを抱きかかえると、足早にその場を後にした。

おかしいと思ったんだ。
まさか倒れるとは思ってなかったから吃驚した。



もしかしたら、僕が原因かも‥‥。



血は毎日貰っていたわけではない。
週に二回位にしていたし、量も少なめにしていた。
でも、少しずつでも減っていく血の量はきっと多いだろう。

体はこれについていけなかったのかも。
いや、もしかしたらついていけないのかもしれない。

不安ばかりが頭によぎる。
スミレの顔を覗けば、少し苦しそうに見えた。

「‥‥ゴメン」

口から出る言葉はこればかり。
重く、重力を宿して下へと落ちていく。

僕はスミレを保健室へと運んでやったけど、先生は不在中‥‥。
運が良いんだか、悪いんだか。
とりあえずスミレをベッドにそっと降ろして、僕はそのべッドに腰をかける。
すると二人分の体重を受けたベッドは、小さく悲鳴を上げた。
僕はスミレの首筋にある片方の僕の跡を、そっと撫でた。

「‥‥駄目、だ」

本能からか、
僕の本望からか、



スミレの血を欲してしまう。


< 19 / 63 >

この作品をシェア

pagetop