one contract

いつもはコーヒーを飲む僕だけれど、今日はスミレがいつも飲んでいた紅茶を飲んでみた。
口に含めばふわり、ふわりとダージリンの心地よい香りが広がって僕を包む。

また、一口。
ふわり、ふわり。

たまにはこういうのも悪くは無いな。



ところで、契約の仕方は?と先輩に訊こうとした時だった。

「っ、会長‥‥ッ!!」

大きな扉がキィッと小さく鳴いて、桃が入ってきた。
あれ?時間的にはもう、昼休み終了3分前ってとこなんだけど‥。
入ってきた桃は苦しそうに肩で息をしていた。
そうとう、急いで来たみたい。
先輩は直ぐに席を立って、桃の身体を優しく支えた。

「お、おい‥、どうしたんだよ。」



昨日、黝はあんな事をいちいち僕に言いに来た。



「す、菫が‥‥、」



だから、



「‥た、いへん‥‥。」



嫌な予感はしていたんだ‥‥―――――。


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