one contract

‥‥センパイの方が、スッゴク嫌な感じ。



屋上へ足を向けようとするセンパイ。
ボクにとってそれは後戻り。

「ま、とりあえず行こうぜ?屋上」
「っ、い、嫌だ‥っ!!」

ボクは思いっ切りセンパイの手を振り払って逃げた。
センパイは生徒会室へ行く方の道に居たから、逆の方向へ。
つまり、来た道の方へボクは走った。
しばらくして、昼休みの終了を告げる鐘の音が校内にエコーした。
後ろを見てみれば、センパイはまだボクを追いかけてきていた。

‥‥もうすぐ授業が始まっちゃう。

授業中に校内を走り回って、先生に怒られるか。
それともセンパイに捕まるか‥。

「仕方、無いよね。」

誰かに言うわけでもなくポソリと呟いて、ボクは授業中には誰も来る事のない屋上へと向かう事にした。
これはセンパイの意図通りになるは分かっている。
分かってけれど先生に怒られるよりは

マシ、だからね。
‥‥多分。

屋上の扉を開けて、外に出たボクは足を止めた。

「あれぇ?堪忍してくれたのかぁ?」

不気味な笑みはさっきのままで、ボクにじりじりと近寄って来るセンパイ。
ボクも体をセンパイに向けたまま後退る、が‥‥

カシャンッ‥‥

「はい、そこまで」

背中が金網に当たった。
もう、後ろに下がる事は出来ない。
気付けば角に追い込まれているし‥。



走っている時、いろいろ考えてみたんだ。

ボクが“特別”な人って事を知っている。
アオちゃんの事も。

もしかして、センパイは‥‥――――
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