one contract
ではなくて、
スミレを選ぶ事。
今、気づいたよ。
スミレを守る、大切にするという事は
僕がスミレから離れる事じゃない。
傍にいてこそ、守れる、大切に出来るんだ。
『契約したら、吸血鬼はその“特別”なヤツの血しか飲めなくなる。そして、その“特別”なヤツは、その吸血鬼だけの“餌”になる』
そうなったら、僕はスミレの血しか口にする事が出来なくなる。
不満だっていう事は無い。
むしろ大歓迎って感じだし。
それに、スミレが誰からも狙われなくなる。
なら、良い。
『残りの人生を共に歩む事も意味するぞ』
‥‥。
「スミレ」
「何?」
ねぇ、さっきから『契約しよう』ってお前は言っているけど、それはちゃんと覚悟しているって事?
「契約したら、死ぬまでず―――っと、嫌でも僕と一緒なんだ」
それでも、いいの?
そう問うと、一瞬泣きそうな顔をした。
何でそんな顔するかな。
そういう顔をさせる為に、こういう事を言ったんじゃないんだけど。
それに‥‥お前には僕よりもっと、良い人が現れるかもしれないんだし。
でも、僕よりスミレに似会う人はいないと思うけど。
「‥アオちゃんは、ボクと契約しても良いと思ってる?」
そう、だね‥。
「僕はお前が必要だって思った。最初はもちろん、血が目当てでお前に近づいたけれど、今は“お前”が誰よりも、何よりも大切だと思ってる」
そして、契約する事が大切なお前を守る手段なら‥‥、
「‥‥契約、して良いよ」
と、スミレに優しく微笑みながら言ってやると、しばらくキョトンっとした顔で固まった。
そして、大粒の涙の雫を目から落とし出した。
あらら、泣かせちゃったな、また。
僕より一回り小さな体を引き寄せて、優しく抱きしめた。
本当はもっと強く抱きしめたいけれど、そうすると壊れてしまいそうだったから。
「っ、ぅ‥、アオ、ちゃ‥‥」
「ん?」
「好き、好き‥ッ」
「ん、僕もスミレの事が好きだよ。」
愛してる。
好きの最上級でそっと囁けば、スミレは僕の腕の中で嬉しそうに、ありがとう。と頷いた。
やっと言えた。
愛しい人への一番の愛情表現を。