one contract
急に扉が開く音に、僕とスミレはその格好のまま硬直。
背中に冷や汗が通り抜けるのを感じた。
でも扉を開けた主の顔を見て、僕はホッとしたというか‥呆れた。
「‥あ、悪ィ悪ィ」
と言いながらも入ってくる先輩。
その後ろには顔を赤くした桃がいた。
はぁ‥‥。
お約束、な展開だね。
「ちょっと先輩、今イイトコだったんだけど?」
嫌味を含めた声色で言ってやる。
あーあ、本当にイイとこだったんだけどなぁ。
スミレはというと、耳まで真っ赤にして下を向いていた。
はぁ、お前は反応が可愛すぎ。
「そうだよなぁ、あと1、2秒後だったらアブネェトコだったよな?」
‥‥コイツ、絶対今の状況を絶対楽しんでいる‥‥。
初めてではないが、先輩に殺意が沸く。
ていうか、何で此処に来たの?と訊くと、屋上の日陰にいても熱かったから。って‥。
はぁ、よりによってこんなタイミングとは‥‥。
泣けるよ。
「スミレ、良かったね」
天使の様な微笑みで桃はスミレにそう言った。
何?桃は知っていたってわけ?
雰囲気からして、‥‥先輩も?
先輩によれば、この前相談されたとの事。
その時にスミレはゼ~ンブ暴露したって‥‥。
スミレって、先輩が僕と同じで吸血鬼だって、まだ知らないよね‥‥?
もし先輩と桃が僕たちと同じ様な関係じゃなかったらどうしてたわけ。
‥‥お前はいろんな意味でキケンだ‥‥。
大きなため息を一つ吐く僕に、先輩は耳打ちをしてきた。
「大変なのは、契約してからだぜ」
と。
確かに、“特別”な人しか血は貰えなくなったから、替えがいなくなった。
スミレの体の事を気にしていかないと。
でも、僕の欲が持つかどうかが問題だな‥‥。
あんなに美味しい血なんだから。
僕はとりあえず頷いて、その場を済ませた。
‥‥にしても、本当に惜しかったなぁ‥‥。