one contract
今日の部活はサボり!
だって、まだ契約していないからセンパイに狙われるかもしれないし。
あの時みたいに無理矢理迫って来られるのなんてゴメンだもん。
だから、アオちゃんに仕事の邪魔にならない程度に構って貰おうと思って。
生徒会室の前まで来たのは良いものの‥‥

「‥‥ど、ぅしよ」

ドアノブに手はとっくの昔に掛けている。
でも、ドアノブを回せない。

何でって‥、知らないよっ!
口か何処かから出てきそうな位に心臓バクバクしてるしッ!!
耳元にあるんじゃないかって位に五月蝿いしッ!!!

「‥‥スミレ?」
「うひゃあ‥ッ!?」

急に後ろから掛けられた声に驚いて、自分でも聞いた事の無い変な声が出た。
は、ははは。
ボク、こんな声出せるんだぁ‥‥。
てか、本当に口から心臓が出てくるかと思った。
その声の主がアオちゃんだっていうせいもあると思うけど‥‥。

「どうした?スミレ。中に入らないの?」
「あ、えっと‥‥、入る、よ?」

ボクのギクシャクした喋り方と行動に、アオちゃんはハテナマークを頭の上にいくつか並べ、ボクの手の上からドアノブを押した。
入るんだったら、さっさと入る!そう言って。
このアオちゃんの行動にも驚いて、ボクは口をパクパクと金魚みたいに動かした。
顔もきっと‥‥というより、絶対に真っ赤だよ。

中に入るとアオちゃんは、紅茶いる?と訊いてきた。
とりあえず、じゃあ。と返して、いつものソファーに腰を下ろす。
今日一日にいろんな事がありすぎたボクの体は、結構疲れていた。
ソファーに預けた体が、どんどん沈んでいく様な感覚に襲われて‥‥。
アオちゃんは紅茶の入ったティーカップをそっとテーブルに置いて、ボクの隣に座った。

「スミレ?‥眠い?」
「うん‥、疲れた」
「そうだね、今日はいろいろあったからね」

良い子良い子とする様に、ボクの頭をアオちゃんは撫でる。
駄目だよ、眠たくなっちゃうじゃん。
まだ、契約もしていないのに‥‥。

「そういえば、契約まだだったね」
「うん、‥してない」
「さっきは先輩に邪魔されたからなぁ」

アオちゃんは嫌味を込めた低い声で声で言った。
あ、もしかして根に持ってる?

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