one contract

「スミレ、‥‥沢山、僕達の良い時間を創っていこうね。少しずつ‥」
「あ、今ボクも同じ事考えてたよっ!」
「そっか、じゃあ‥」

夕日が完全に沈む直前、月は待ち切れずにもう顔を出していた。
太陽と、月に照らされたボク達の影が、

「一緒に過ごす中で、たくさんの良い時間を作るって‥約束してくれますか?」
「うん、約束する!!」



そっと重なる。



離れると同時に、太陽は完全に沈んでいった。
そして月が待ってましたと言わんばかりに、淡い光を放ち出す。

「このキスは、“恋人”としてね」
「‥‥ぇ、ぁ‥」

あの時したキスは、“吸血鬼”と“餌”としてだったでしょう?

そう言って、ボクの額にキスを落とすアオちゃん。
正直言ってその顔が、その声が、その行動が‥‥



反則、だよ。



おかげでボクの心臓はバクバク言ってばかり。
‥はぁ、今日だけで、どれだけ寿命が縮まったんだろう‥‥。

「今日は、久しぶりに貰おうかな」
「?」
「“食事”させてって事」
「え?こ、ここで?」
「そ」
「だ、だだだだ、ダメだよぉ‥ッ!!」
「はいはい、分かってるよ」



貴方に会えて、本当に良かった。

でなきゃ、こんな幸せを感じれなかったでしょう?
この気持ちを知らないままだったでしょう?



ボクはこれからの時に刻んでいく、アオちゃんとの時間の幸福を月に祈った。



まぁ、祈るものじゃなくて
ボクたちで創っていく物なんだけれどね。





end



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