君の忘れ物。
プロローグ
「知恵。荷物詰めれた?」

「うん、何とか。」
「ずいぶんキレイになったねぇ。なんだか淋しいわぁ。」

「大丈夫だって。またすぐ会えるからさぁ。」


私は今日、母と姉に見送られて、家を出ます。
夢を叶えると約束した彼のために。


「じゃあ、そろそろ行くわ。」

「うん。気をつけてよぉ。体には十分に気をつけて。それから…」

「お母ちゃん。もう大丈夫だから。」

「でも…」

「お母ちゃん。知恵ちゃんは大丈夫だよ。」

「そう、ねぇ。」

「知恵ちゃん、またね。勉強頑張りなよ。」

「わかってるって。じゃあ、いってきます。」

「いってらっしゃい、またね。」


そして、絵本作家になるために北海道へ向かった。


彼の故郷だった。
大好きだった彼の。

正人。
あなたはいつも
何かを忘れていくね

大きかったり
小さかったり


それを見る度に
あなたの顔が出てくるよ。




会いたいよ…
< 1 / 16 >

この作品をシェア

pagetop