指切りげんまん
楼蘭荘の中は別世界のようだった。
山奥に不釣り合いなシャンデリア、果ては屋敷を彩る華美な調度品。

「あちらへどうぞ」

廊下を導かれるままに進む。
一歩歩く毎に敷かれた絨毯の心地良さに驚かされる。

「ねぇ…佑」

「どした?」

酷く押し殺した声は緊張感を放っている。
つられて俺の声も小さくなった。

「この絨毯もふもふすぎて気持ち良い!あたし絶対この上で寝れる」

「勝手に寝とけ!」

緊張感が砕け散った。

「仲よろしいですね」

笑いを堪え切れず七瀬が振り向く。

「とんでもないです…毎日殴り合いですよ」

「それでも…羨ましいです」

笑う七瀬の顔は影がさしていて。

何も知らないとはいえ自分の失態を恥じた。
両者ともどんな言葉を発すればいいか解らない。
気まずい沈黙。

「…なんかすいません、中どうぞ」

沈黙を破ったのは七瀬だった。
すぐ横の扉を開く。

小さいホール程の部屋には長いテーブルに数人の人間が存在していた。


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