君は君のままでいて
いきなりそう言うと、局長はスーツケースを引きずって駆け出そうとする。


「あ、あっ!
くれぐれも気を付けて下さいねっ!
それから帰る日にちだけは厳守ですからねっ!
………それだけ守って下さったら、仕事の方は可能な限り僕と緑風で終わらせておきますよ。」


あんまり注意してばかりの見送りもなんだからと、僕は最後にそう付け加えた。


その言葉に、既にゲートの向こうへ意識を飛ばしてしまっていたお義母さんが僕の事を振り向く。


「美樹ちゃーん。
蒼波くんの次に愛してるっ!」


飛び込むように、ひしっと抱き付いて僕への愛を体現して。


そうして、思い出したようにスーツの内側へと手を差し入れた。
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