君は君のままでいて
それが、先刻僕の頬を冷やしてくれていたものだと、一瞬遅れて気付いた僕は、緑風から受け取ったソレを意識しないまま顔に当てていた。


「………大丈夫か?」


僕の大好きな低い声が、間近から聞こえてきた事に僕の身体はビクリと反応してしまうのだけれども。


「あ、うん。
大丈夫………って。
僕、なにかやっちゃったの?」


なんだか記憶が途切れちゃっているような気がするんだけど?


「そか。」


大きく吐息を吐きながら、緑風は安心したかのような表情を見せて。


そうして、今度は厳しい表情になったかと思うと僕の目の前まで顔を寄せた。
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