制服のボタン


つうか自分でお礼とか言うか普通!!





「そのボタンやるよ!俺の事忘れない様に」





…なっ………







冗談かと思ったのに。






その男があまりにも真剣な顔して言うから。





何も言えなくなった。



風が吹いて私の長い髪が靡く。



カサカサと音を立て、芽吹いたばかりの青葉が擦れる音だけが聞こえているだけで。




そこだけ時が止まった様に身動き一つ出来ないでいた。






「クスッ」



口元を緩ませて私に背を向けた男。




その後ろ姿を見つめながらボタンを握りしめていた。





変なヤツ…






これがアイツとの出会いだった。







< 10 / 177 >

この作品をシェア

pagetop