制服のボタン
つうか自分でお礼とか言うか普通!!
「そのボタンやるよ!俺の事忘れない様に」
…なっ………
冗談かと思ったのに。
その男があまりにも真剣な顔して言うから。
何も言えなくなった。
風が吹いて私の長い髪が靡く。
カサカサと音を立て、芽吹いたばかりの青葉が擦れる音だけが聞こえているだけで。
そこだけ時が止まった様に身動き一つ出来ないでいた。
「クスッ」
口元を緩ませて私に背を向けた男。
その後ろ姿を見つめながらボタンを握りしめていた。
変なヤツ…
これがアイツとの出会いだった。