制服のボタン


卓君が…




女の子と腕なんか組んで。



笑いながら…




見間違いじゃ…。




沙織の顔が曇ってゆく…



…えっと…こうゆう場合。




友達にどんな言葉をかけるべき…?




どっちかって言うと私は。

卓君の隣で満面の笑みを浮かべ、頬を赤らめる女の子。



あっち側の女だった訳で…




「沙織…」



目を凝らし卓君を見る沙織が。




「あの娘…卓が好きなんだよ。私と付き合う前から。私…知ってたんだ。でも知らない振りしてたの…」





沙織?





卓君だけを目で追いかける沙織の頬に、涙が溢れていた。






「…ごめん凜花…先帰る」




そう言って沙織は走って行ってしまった。




「ちょ、ちょっと沙織!」




私の声なんか届かなくて。



走り去る沙織の背中を見つめた。





さっき卓君と女の子が歩いていた場所には。




もう。




卓君の姿はなかった。








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