ゆきうさぎ

雪の中の迷子

「寒いと思ったら、雪かぁ。」
 巻いているマフラーに顔をうずめてつぶやいた。
『ガキの時は、雪が降ると嬉しくて、走りまわったけどね。』
 はらはらと舞い落ちる雪を見上げながら、ため息をついた。
高校生にもなれば、そんな気にもならない。まっ、中にははしゃいで校庭を転がっているやつらもいるけどね。
 どうせバスも遅れて混んでいるだろう。
「たまには歩いて帰るか。」


 だんだん白く染まって行く周りの景色をキョロキョロと見渡しながら、自分が雪景色の中をワクワクしながら歩いていることに気が付いてちょっと意外だった。
『雪なんてなんとも思わないけど、これだけ降ると周りの音もしなくなるんだな。』
傘に降る雪の音だけしかしないような気がした。カサッ
カサカサッ
生け垣の隙間から、何かが飛び出してきた。

驚いて一歩後ろに下がると、赤い色が目に飛び込んできた。

「こんにちは。お兄ちゃん!」
真っ赤な傘に同じく赤いコートを着た女の子が飛び出して来た。
なんだか見たことのある顔だけど思い出せなかった。
「どうしたんだ?こんな天気に。親はいないのか?」
どうみても、まだ小学生前に見える。1人とは思えなかった。
「私1人よ。でも、もうすぐ迎えにくるの。お兄ちゃん一緒にあそぼ!」
「えぇ~!!」
何でこんな日に、小さな女の子の相手なんかしないといけないんだ。
思い切りイヤな顔をしてみせた。
女の子は、ニコニコしながら雪の上に足跡をつけていた。
雪景色の中で、真っ赤な女の子はとても目立っていた。

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