『花、愛でる人』
恋の訪れ
変わり映えのしない当たり前な日常。



平凡なのが平和な証拠だっていうけど、やっぱりどこか物足りないワケで……。



特別な刺激が欲しいとかじゃなくて、ただ……青春真っ盛りのこの胸がときめくような何かを期待してしまうのは事実。




そんなわたしの胸の内を知ってか知らずか、



寄り道したショッピングモールの片隅で、わたしは見つけてしまった。




わたしの胸をときめかすモノ。




こじんまりした花屋の店先で、伏せたまぶたから睫が影を作り出す。




黒のエプロンに、捲りあげたシャツの袖から伸びた白く長い腕が映える。



それ以上に、



指先でそっと花々に触れる穏やかな表情に、目を奪われた。



胸が馬鹿みたいに高鳴る。




花を愛でる人。




わたしは彼に、




恋をした……。
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