『花、愛でる人』
「美味いよ」
優しく囁き、また笑う蓮につられて顔がゆるゆるに綻んでしまう。
……良かった。喜んでくれた。
ケーキを口に運ぶ蓮を、満足げに見つめていたわたしに、
『ぐぅ~~~~』
「……あっ」
「っ!?」
人生最大の恥ずかしさが襲いかかった。
……最悪だ。
きょとんとした表情でわたしを見つめる蓮に、頬はこの上ない程真っ赤に紅潮していった。
恥ずかし過ぎて蓮の顔が見れない……。
「……夢梨」
「えっ……んっ」
蓮の声で反射的に顔を上げると、口元にクリームのついた苺が差し出され、
「花は白なのに……果実は真っ赤。熟れる前は緑色」
呪文のような蓮の言葉に誘われるように、それはわたしの口に飛び込んだ。