『花、愛でる人』
「花屋に行く口実が欲しいんだろっ?」
どんな本を探してるかなんて一言も言ってないのに。
夏葵にはお見通しだったみたい。
「夏葵には敵わないよっ」
「当然っ」
にっと笑った夏葵に差し出され本は、花言葉の本。
「相手さんは花言葉に詳しいんだろ。だったら共通の話題作りだな……記憶力の無い夢梨には酷だけど」
なんていちいち一言付け加えるのも夏葵の愛情表現だって思う。
そんなことを思いながら小さく笑みを浮かべ、受け取った本を開いてみた。
無作為に開いたそのページには、ゴツっとした木の枝先に不器用に花びらを咲かせた可愛い白い花が写っている。
「コブシ。……なんか厳つい響きだな。木もゴツいし」
「ははっ。確かに」
手元に開いたページを覗き込んだ夏葵が漏らした一言に、小さく笑い返した。
「厳ついけど優しい白だね。花」
「……まあな」
言ったきり夏葵は本棚に目をやり、別の本に手を伸ばしていた。