『花、愛でる人』
だから、夏葵は気付いていない。
夏葵に似てる。
なんて小さく呟いたわたしの言葉は。
無愛想そうな不機嫌面な癖に、言葉や行動の端々に優しさがある……。
何より、
「……『友情』」
この花言葉がピッタリだって、感じたから。
柄にも無くそんなことを考えていたわたしの頭に、コツンと小さな痛み。
振り返った先には、さっきわたしの頭にぶつけたであろう本を差し出す夏葵が居た。
「おまえはユリの花っていうよりこっちだな」
夏葵が開いて見せたページには、小さな薄ピンクの花が反り返りそうな程全開に花弁を開いていた。
「日々草?」
「一夏中どんどん咲くらしい。……チビの癖に元気だよな」
くくっと短く笑った夏葵が、身を翻す。
「手続きしてさっさと帰んぞっ」
「うんっ」
ぶっきらぼうに言い放つ背中に、笑顔で頷いたわたしは足を早めた。
きっと夏葵も一緒なんだよね?
日々草の花言葉に、わたしを重ねてくれたんだったら嬉しい。
「『楽しい追憶』、『生涯の友情』……」
これからも、夏葵と共有していけますように……。