『花、愛でる人』
伏せられた長い睫が作る影は……わたしが初めて蓮を見かけたときと同じ色気を含んでいた。
綺麗に通った鼻筋と結ばれた唇。
花を愛でる姿に、また胸がざわついた。
「はいっ。お待たせしました」
「わぁっ……可愛いっ」
蓮に差し出された花束は、淡い紫色のアイリスを霞草がふんわりと覆っていた。
パステルカラーの黄色いレースに包まれ、みんながわたしを見つめている。
キミの『恋のメッセージ』は、僕たちが伝えてあげるよ……って、励ましてくれてるみたいに。
「……霞草は、女の子から男の子に思いを伝えるときに添えるって」
「んっ?」
花束を受け取るなりボソボソと呟き、そんなわたしを不思議そうに見つめる蓮をぐっと見上げる。
いつもより強い眼差し。
噛み締めた唇に思い出すようにぎこちなく息を吸い込み、
「受け取ってくださいっ!」
「えっ、あっ」
ガバッと頭を下げたわたしは、半ば無理矢理蓮の腕にそれを押し付けて踵を返した。