『花、愛でる人』

「……こんにちは」



店先からちょこんと顔を覗かせ、中の様子を窺ったわたしの目に映ったもの。



ショッピングモールの喧騒が遠くに聞こえる穏やかな空間で、



一層緩い空気が流れる場所があった。




「……寝て、る?」




丸いテーブルの上にはカタログや書類が無造作に散らかり、その上に突っ伏した蓮は気持ちよさそうな寝息を立てていた。



「…………」



寝てる顔も綺麗だな……なんて思いながら、しばらくは呆然と立ち尽くしていたものの、




「仕事中……だよね?」



どう見ても他に店員さんらしき人も居ないし、何より蓮の体にはいつも通り黒のエプロン。



仮に他に店員さんが居たとしても、店の中で寝てるのは……いくらなんでもおかしい。




……起こそう。



きっと、書類か何かに目を通してる間にうつらうつらして眠ってしまったんだろう。



そう思い、テーブルに突っ伏した蓮に近付き、



「蓮……起きてっ」


「…………」



呼びかけてみるものの、反応は無い。



……そんなことだろうとは思ったけどさ。
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