『花、愛でる人』

誰かが髪を撫でている。

……優しく、柔らかな手つき。



それは時たま頬にサラリと触れて……やっぱり髪を絡める。




気持ちいい……。




頭を撫でる優しいこの感触を……わたしは知ってる……。



「っ!」

「あっ……」



お客さんが来たら蓮を起こそうと見張っていた筈のわたしの記憶が、何故かスッポリ抜けている。




「おはよう、夢梨」


「えっ……あっ!」



うっすら開いた瞼からは、キラキラとした光と共に大好きな甘い笑顔が飛び込んできて、慌てて体を起こした。



しまった……。
蓮を起こしてあげる筈が、つられて眠っちゃってたんだ……。



「ご、ごめんっ!」



「ううん。大丈夫」



しかも……蓮に寝顔を見られた。


恥ずかしすぎる……。



慌てて椅子から立ち上がろうとしたわたしに手を伸ばした蓮は、



「やっぱり、似合う」




指先を頬に掠めながら左耳に触れた。



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