『花、愛でる人』
勇気
「珍しいな」
蓮に貰ったペチュニアの髪飾りをつけていたせいか、それとも沈んだ表情をしているせいか……。
夏葵にかけられた声がどちらに掛かっているのかわからず首を傾げた。
「貰ったのか?」
「うん……」
「……じゃあ、なんでそんな顔してんだよっ」
確かに……なんでわたし、こんなに沈んでるんだろ。
この間の苺の花は涙が出るほど嬉しかったのに……。
「例えばさ」
「…………」
自分の問い掛けに答えず言葉を発したわたしに、夏葵はただ黙ってこちらを見据えていた。
「名前、呼び間違えるときって……どんなときかなぁ」
「はぁ?」
何の脈絡もなく切り出した言葉に、夏葵は怪訝な顔でわたしを一瞥し、
「……間違われたのか?」
ふうっと溜め息を漏らした。
そんなことくらいって言いたげな夏葵をぐっと睨み付け、唇を尖らせる。
「だって! もしかしたら蓮が優しいのは、その人とわたしが似てるから……」
「アホくさ」
不安を口にすればあっさり切り捨てられた。
そりゃもう、拍子抜けするくらい……あっさり。