『花、愛でる人』
「そんなことで悩むって、お門違いも良いとこだろ」
「そんなことって!」
「じゃあ聞くけどな。おまえと蓮って奴はどういう関係なんだよっ」
厳しい口調で言い放つ夏葵に返せる言葉が見つからなくて、わたしは下唇を噛み締めた。
そんなわたしの反応は、夏葵には想定内だったらしく、
「夢梨の片想い。客と店員。ただそれだけの関係だ」
あえて声に出して自覚させる辺りが夏葵らしい。
そうだよ。
わたしと蓮の間に、確かな繋がりなんて無い。
あるのは、わたしの一方的な想いだけ……。
自覚した途端、心は急降下で鬱いで沈んでいく。
完全に下を俯いてしまったわたしの耳に、夏葵が漏らした短い溜め息が響いた。
「……客商売のことはわかんねぇけど」
「…………」
ガシガシっと荒っぽく髪を掻きながら、眉間にシワを寄せた夏葵は歯切れが悪く、
「花屋に差し入れ持ってったり、用もなく来たりする客は……商売上は良い客とは言えないだろ」
いつもの歯に衣着せぬストレートさが感じられない。