『花、愛でる人』
あれから夏葵と別れて数分も経たないうちに、
「あっ」
ポケットの携帯がメッセージを受信した。
差出人は夏葵。
夏葵からのメールなんて、今まで数えるほどしか送られてきたことないのに。
何事かと手早くボタンを押し、受信メールを開くと、
「……わっ」
文章は一切無く、その代わりにただ一枚の写真だけが添付されていた。
空に向かって真っ直ぐに枝を伸ばした木。
晴れた空からの光に映えた黄緑の葉っぱ。
「ポプラ、だ」
回りくどい奴。
散々、花言葉の本とにらめっこしたんだからわかるよ。
「よしっ……。『勇気』出して行こっ」
ポプラの枝のように腕を真っ直ぐ空に伸ばし、小さく呟いた。