『花、愛でる人』
「夢梨をお客さんなんて思ったことは無いよ」
消えない不安の代わりに、蓮の優しい声が胸の温もりを生み出す。
「……夢梨と居ると、心が和らぐから」
そんな優しい言葉……そんな優しい顔で言われたら、どんどん欲張りになっちゃうよ……。
「だったら……蓮はわたしを受け入れてくれますか?」
「えっ?」
「……アイリスと霞草に込めたわたしの気持ち、受け取ってくれる?」
ギュッと握り締めた手を胸元に持って行けば、ラベンダー色のコロンの香りが漂った。
「『答えをください』」
漂う香りに乗せた言葉は、蓮の顔色を変えていった。
それまで絶やすことの無かった蓮の優しい顔がゆっくりと消えていき、
「……ごめん、夢梨」
ひどく哀しそうな、凍えた瞳でわたしから視線を外した。
「俺は、受け取れないよ……。想う人が居るから」
そして、困ったように曖昧に笑い、もう一度小さく謝った。