『花、愛でる人』
わたしを優しい眼差しで見つめていた蓮の顔から、不意に憂いの色が零れ出す。
それを窺うように見上げるわたしの左耳に、そっと指先が伸びた。
蓮に貰ったペチュニアの髪飾りが小さく揺れる。
「……夢梨に贈った言葉に、嘘も偽りも無いよ」
夢梨の気持ちを受け取れなかった男が言うセリフじゃないけどね……。
自嘲気味に笑ってみせる蓮に、胸がまたざわめき始めた。
どうして……そんなこと、言ったりするの?
わたしの気持ちは受け取れないのに……なんで優しさだけくれるの?
「……狡いよ」
気がつけば俯いていた唇からは、小さな呟きが漏れていた。
それなり『沈黙』した蓮に、ラベンダー色のコロンをおまじないにしたのは間違いだったって……今更に悔やんでしまう。
わたしはあなたの綺麗な瞳に、『疑惑』なんて抱きたくないのに……。