『花、愛でる人』
……夏葵の言うとおりなんだろうか。
蓮を想い続けるのは、無駄なこと……?
「選べよ」
「えっ?」
「俺を選べ。……俺なら夢梨のこと、全部受け入れてやるから」
真っ直ぐにわたしを見つめる夏葵に捉えられて、思うように体は動かない。
夏葵の言葉に、全身に痺れたような感覚が押し寄せる。
夏葵は本気なの?
背後で紫陽花の花が揺れた気がした。
それはまるで、『移り気』に揺れているわたしの心みたいだった。