『花、愛でる人』
side夏葵
「こんなとこに居たんだな」
「っ……夏葵」
不意に現れた昔の顔に、以前より少し細くなった蓮が驚きを露わにした。
苑田 蓮。
一年前まで同じゼミで講義を受けていた友達だ。
「久しぶりだな」
俺を呆然と見つめる蓮の表情はあの頃と変わらないようで……やっぱり違う。
変わらない穏やかな表情の中で、目の奥にあった光が感じられない。
「よくわかったね。ここに居るって」
薄く笑った蓮の声色は、表情に反してトーンが低い。
きっと会いたくなかったんだろ。
……あの頃を思い出させる奴に。
「なんか、夢梨が世話になったみたいだから」
「えっ?」
俺の口から飛び出した意外な名前に、蓮の目が微かに揺れた。
……俺もビビったもんな。
夢梨の口から蓮の名前、聞かされたときは。
「小さい時から知ってんだよ。アイツ」
「……夏葵の幼なじみだったんだ。夢梨」