『花、愛でる人』


同じくらいに蓮は、夢梨に大切な言葉を花に託して贈っていたから。




「……夢梨にちゃんと話してやって。石黒さんのこと」




そうすればきっと、夢梨は納得するから。



その上で判断するだろ。
諦めるか、諦めないか……。




黙って頷いた蓮との間にしばしの沈黙。


多分、自分の気持ちを少しでも整理しているんだと思う。




だったらそれが、少しでも蓮にとって前向きな方へ進むことを願う。
そう思い、もう立ち去ろうと足を進めようとしたとき、




「夏葵はいいの?」



「……えっ?」



思いがけない言葉で足を止めざるを得なかった。




「夏葵は夢梨を……俺に託してしまって良いの?」



「良くなかったら来てねぇし。ここに」




蓮が心配そうな顔で俺を見てるから、思わず笑ってしまう。




「俺と夢梨はそんなんじゃないから」



「幼なじみだから? どうせ妹みたいなもんだって諦めてる?」




妹みたいなもん……だったら、俺は蓮には託して無いだろうな。



俺の手で……なんて、思ってたかもしれない。
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