『花、愛でる人』
「妹みたいなもんだったら良かったんだけど、そうもいかねんだよな」
「……夏葵?」
「父親が同じ……夢梨は、半分血が繋がった本物の妹だから。そういう感情はご法度だろ?」
近親相姦は趣味じゃないし。
なんて続けて、短く笑った俺に蓮が緩い笑顔で笑う。
「だからこうして、わざわざ直々に話しに来たんだよ。……完全に兄バカだ」
中途半端な血の繋がりを疎ましかった時期もあったけど、
今はこの兄貴っていうポジションが、割と気に入ってる。
幼なじみであり、兄妹である。
そんな不思議な関係、なかなか存在しないだろ。
「……後悔させないと思う、蓮のこと。自慢の妹だからさ」
ワザとらしくにっと笑ってみせれば、
「……知ってるよ」
笑い返した蓮の笑顔は、一年前と変わらないものだった。