『花、愛でる人』
恋の呪い side蓮
「蓮っ。こっち」
大好きだった百合奈の笑顔が、こちらを向いて手を伸ばしている。
そこへ必死になって手を伸ばし、絶対に離したくないと願った手を掴むのに、
「っ……」
その手は二度と、掴まれることがなかった。
掴めない手のひらを何度も何度も握ろうと足掻く俺に、
「…………」
百合奈の顔は哀しそうに歪んで、瞳は伏せられた。
そんな顔しないで……。
俺だけを見つめて、俺に笑ってみせて……。
……絶対に離れないから。
紡ぎたい言葉も、百合奈には届かず、
触れたい肌も絶対に届かない。
そのうち、哀しい顔で俺を見つめながら、
「…………」
百合奈はくるりと身を翻し、俺に背中を向ける。
遠ざかっていく百合奈に必死に呼びかけ、必死に腕を伸ばしているところで……いつも目は覚める。
一年前から数え切れない程見た百合奈の夢。
頬を伝う生温い雫が、いつもおまえは生きてるんだって自覚を促してくる。