『花、愛でる人』
わたしを信じて
「いらっしゃいませ」
「あのっ……」
蓮ともう一度話がしたくて訪れた花屋に、見慣れたあの姿は無かった。
代わりに在ったのは、綺麗な長い髪を一つに纏めた優しげな若い女の人だった。
「何かお探しですか?」
顔を強ばらせたわたしに、彼女は微笑みながら優しい声色で尋ねる。
ここ以外に蓮が居そうな場所をわたしは知らない……。
「……すみません。何でも無いですっ」
この人に蓮のことを聞くワケにもいかず、一礼をして身を翻したわたしに、
「……夢梨ちゃん、かな?」
「えっ?」
不意に名前を呼んだ彼女は、
やっぱり!
って手を打ちながらにっこりと満面の笑み。
なんでわたしの名前、知ってるんだろう……。
状況が掴めずにポカンとするわたしに断りを入れ、彼女は店の奥へと駆け込んで行く。
一体何があるんだろ……。
呆然と立ち尽くしていたわたしに、
「はいっ」
彼女が差し出したのは、一輪の白い花と一枚のメモだった。