『花、愛でる人』
綺麗な花壇が続く道を抜けた先に広がる光景。
整然と並んだ墓石の間をアスターを片手に、駆けていく。
蓮はここに居る……。
静寂に包まれた霊園の端で、
色とりどりの小さな花を束ねた蓮の姿を見つけた。
目の前に在る一つのお墓を、ただじっと見つめる蓮は出逢ったときと一緒。
伏せた目に感じる儚さの原因は、これなのかな。
蓮の立つ場所から数メートル離れたところで足を止め、じっと待つことにする。
きっと今、蓮は目の前の大切な人と、大切な話をしているはずだから……。
ゆっくりとしゃがみ込んだ蓮が差し出した花の束。
わすれな草だ。
しゃがみ込んだ蓮は拝むでもなく、じっとお墓を見つめる瞳。
そこには、お墓とは違う別のものを映してるのかもしれない……。
きっと……それは百合奈さんなんだろうな。
手のひらのアスターが、わたしの足を一歩一歩進めさせていく。
『わたしを忘れないで』
蓮はまだ……百合奈さんを想っている。
……亡くなった百合奈さんを。