『花、愛でる人』
「俺……百合奈を愛してた」
「……うん」
蓮まで後一歩のところまで近付いて、立ち上がったその手を握った。
横を向いたままの顔で呟いていく言葉を、詰まりそうな胸で受け止めていく。
だって、わたしは蓮の無言の伝言に答えたいから……。
蓮を信じてるから。
「百合奈が死んだとき、俺の心も死んで……。だから、自分が百合奈を忘れるなんて有り得ないって……思ってたのに」
正面を向いたままの蓮の表情は、さっきから変わらないのに、
わたしが握った手を握り返す力は強くなっていく。
「けど夢梨が現れて、心がまた動き出した」
声色が苦しげに変わり始め、わたしが思わず残っていた後一歩を踏み込んだ瞬間、
「夢梨と居ると幸せなのにっ……百合奈を忘れたくないんだっ……」
握っていた手をギュッと引かれ、気がつけば体中が蓮の体温に包まれていた。
「っ蓮……」
蓮の胸元に当てていた頬に、涙がどんどん伝っていき、
蓮のシャツにじわっと涙が染み渡っていく。