『花、愛でる人』
「どんだけ見栄張ったって中身は一緒だろ」
さっきから変わらないトーンで呟いた一言にはずっしり重みがあった。
……そうだよね。
どんなに欲張って見栄張ったって、中身のわたしは変わらない。
「これを不味いっつーような男だったら、おまえに見る目が無かったってことだ」
相変わらず歯に衣着せぬ物言い……。
気心知れた幼なじみだからこそだけど、今は励まして欲しいってのが正直なとこ。
ケーキの箱を持ったまま立ち尽くしたわたしの、あからさまに落とされた肩に手が伸びる。
「おまえの童顔も、難しいこと考えずに笑ってればそれなりに見えんこともないと思う」
「回りくどいってば」
生クリームがついた指先をわたしに向け、夏葵は薄く笑った。
バカにされてるのか、励まされてるのか紙一重。
でも、間違いなくこれは励ましだ。
「……悪く無い、味は」
わざわざ味はって強調するところがちょっとイヤミ。
でも、これも実は励ましだったりする。
味は保証する、っていう。
……おかげで肩の力が抜けた。